公開日:2017年9月18日

英語は化学的だ!

英語は化学の発想で捉えることができます。

例えば次の文を考えてみましょう。

(1) *This is teacher.

言語学では、非文法的な文に*をつけます。(1)の文は*をつけないといけない間違った文です。次の文のようにしないといけません。

(2) a. This is a teacher.

  1. This is the teacher.

(2)文に書き直したとたん、文は安定します。(2a)文は「この方は先生です」、(2b)文は「この方が先生です」の意味です。不定冠詞と定冠詞の差は、「は」と「が」の差になります。

(2b)について、いきなりこの文を発すると変ですが、相手に「先生がいますよ」と伝えておいて、実はこの方がそうであるというような紹介をするとき、極めて自然です。補足して言えば、「この方が(先ほど、お話していた)先生です(よ)」という感じですね。

ここで、やや「こじつけ」(forced analogy)に響きますが、つぎのような類推が成り立ちます。

(3) a. 単語レベル・・・原子 → teacher

  1. 句レベル・・・分子 → a teacher / the teacher
  2. 文レベル・・・化合物 →  This is a teacher. / This is the teacher.

単語レベルは原子のレベルでそれだけでは安定しません。名詞の場合は、冠詞を筆頭に形容詞などがついて(つかない場合もありますが・・・)初めて安定するわけで、名詞句は英語の分子と言えるでしょう。「句」はまさに「文子」(=分子)、すなわち「文の子」ですね。

分子が複数集まってできる化合物は、文に似ています。これもジョーク的に言うなら、文は「加語物」[かごぶつ] (=化合物)です。

言葉遊びはこれぐらいにして、ここで私が言いたいことは、<言語は単語のみでは安定しない>ということです。文のレベルで言うと、文は単語の単なる足し算だけではなく、掛け算を含めた複雑な演算の結果生じるものであると言えます。

とにかく、言語の成り立ちは、足し算を暗示する物理的なものではなく、掛け算を含めた計算機構を持つ、化学的な特徴を持つのです。

英語・化学類似論に対する反論

英語と化学は似ているという主張をしておきながら、それに対する反論も行うという暴挙(?)に出たのと言われそうですね。

「英語は化学的にして、化学的ではない」ということを言いたいのです。一見矛盾に思えるかもしれませんが、実はそうではありません。英語の仕組みの説明に化学的な発想を組み込むことが可能ですが、そうではないと言える側面も同時に存在しているということを言いたいのです。

次の文を観察しましょう。

(4) “Teacher” means a person who gives lessons in something.

(4)において、teacherは無冠詞であってもかまいません。しかし、言葉が完全に化学的であれば、それは許されません。「化学で化学を説明すること」はできません(→「言葉で化学を説明する」から)が、「言葉で言葉を説明すること」はできるわけで、これが化学の世界と言葉の世界の根本的な違いであると言えるでしょう。

すなわち、言語に対する「メタ言語」(言語の言語)が存在するのが、言語の世界の特徴と言えます。(「メタ化学」すなわち「化学の化学」という発想はないのです)

英語とはどういうものであるか・・・このテーマで掘り下げた議論は、次の記事で、さらに進めます!

この記事の著者

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