公開日:2018年7月25日
最終更新日:2018年7月29日

次の言葉は何と読みますか?
 シカイシカイシカイ

意味の成す連鎖にするためには、「歯科医師会司会」となるでしょう。「死か石かい?死海!」(死海という湖は塩分の非常に濃いので長時間死海に浸かっていると危険?)という詩的表現も可能です。ちなみに、通常の海水の塩分濃度が約3%であるのに対し、死海の塩分濃度は約30%です。

この「シカイ」が、偶然何個まで続けて、言葉が成立するかについて、関心を持ったことがあり、私が考えついている「意味のある表現」で最もたくさん「シカイ」が続く例は、以下の通りです。どういう意味であるか想像できるでしょうか?
 シカイシカイシカイシカイシカイシカイシカイいのがないよ。

これは、「鹿石介志」(しかいしかいし)という友人がいたとして、彼から何か良い仕事を探してくれと頼まれたときの,電話での回答の言葉です。
 「鹿石介志かい?歯科医師会司会しかいいのがないよ!」

さて、唐突ですが、言葉は物理的でしょうか?言葉を構成するそれぞれの要素が大きさ・時間・質量と関わらないと物理的とは言えません。

つまり、例えば、大きさが意味を持たないと物理的ではありません。言葉は、たとえ大きく書いても意味は変わらないので、物理的とは言えないのです。

しかも、言葉が発せられる時間が変わっても、或いは速度が変わっても、通例、意味変化はありません。質量に至っては、その概念すらありません。だから、言葉は物理的ではないのです。

さて、「シカイシカイシカイ」の例から、偶然な並んだ形に、区切りがあることがわかります。「歯科医師会司会」の場合は「シカイシ・カイ・シカイ」です。更に、この区切りに,レベル差も存在します。つまり、この構造を理解するのに、次の段階を経るのが普通です。
 レベル1 シカイシカイ・シカイ
 レベル2 シカ・イシカイ
 レベル3 シ・カ / イシ・カイ
 レベル4 イ・シ

レベル1から4の順に理解をして、句全体を認識できるのです。そしてレベル4から1の順に構造を発展させて言葉が生み出されるのです。以上のように、言葉というのは、レベル4から段階的な構造を持ち、表面に偶然「シカイシカイシカイ」が現れるのです。

いわば、レベル1~4が段階的な深層構造で、「シカイシカイシカイ」は表層構造です。これは、A+B→Cとなる化学に似ています。レベル1で検証しましょう。
 レベル1: シカイシカイ+シカイ→シカイシカイシカイ

「→」が入っているので、単なる数学の足し算ではありません。すなわち、「シカイシカイ」と「シカイ」の関係は足し算ではありません。つまり、「歯科医師会司会」は<「歯科医師会」と「司会」>の意味ではありません。だから、数学ではないのです。

また、「歯科医師会」での「司会」であって、「歯科医師会」が「司会」をすることでもなく、「司会」が「歯科医師会」という行為をすることでもありません。だから、「歯科医師会」と「司会」という独立した表現が組み合わさって、新たな概念が生み出されている(つまり化学変化を起こしている)と考えられるので、言葉は「化学」的であると言えるでしょう。

かなりマニアックな発想と思うかもしれませんが、理論言語学を36年研究してきて、ふと言葉について考えると、言葉は物理というよりも化学に似ていると気付いたのです。

更に,次のようなアナロジーもあながちいい加減なものではないという感じがします。つまり、以下の発想も成り立ちも化学的ではないかと思います。
文字 素粒子
語 原子
句 分子 
文 化合物
文章 高分子化合物

文字は素粒子に似ています。その文字(素粒子)を集めて意味のある語(原子)ができます。つまり「語」は「原子」なのです。

語(原子)はそれ自体では安定せず、句(分子)を作ります。「句」は「文」を作るので、偶然、句は「文の子」すなわち「文子」(ぶんし)とも言えます。この「文子」=「分子」なので不思議な偶然です。

そして、句(分子)は,文(化合物)となるのですが、文は「語を加えた物」と発想すると「加語物」と言え、何か「化合物」に発音が似てきます。いずれにしても文(化合物)は一つの考え(特性)を持つのです。

そして、文の集まりとしての文章は高分子化合物に似ているのです。「エッセイとして一つの思想を表現する(=現実の世界に影響を与える)」のに文の集まりが必要なのと同じように、高分子化合物は化学の世界に影響を与えています。

ややジョークも半分入ってしまいましたが、言葉が化学的であるということには間違いないと私は考えています。

この記事の著者

通訳ガイド研究会
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