公開日:2018年7月29日
最終更新日:2018年8月1日


真言宗では、宇宙の真理が、空海が理論化した「六大」という原理で説明できると考えているといえるでしょう。六大とは「地水火風空識」の六つの要素のことで、この6つから壮大な宇宙が成立していると考えるのです。

それぞれの意味を、私なりの言葉で、簡単に挙げておきます。
地 固体性 不変化 密度の高い物質 有
水 液体性 スタティックな変化 物理的変化 中間的な密度の物質 有
火 燃焼性 ダイナミックな変化 化学的変化 ダイナミックなエネルギー 無的な有
風 気体性 密度の低い物質 スタティックなエネルギー 有的な無
空 空間性 スペース(空間) 有と無を包含した空
識 精神性 有・無・空からは超越しつつも、一体不可分な精神原理

地と水と風で物質の三態を表し、火と風はエネルギーを表し、空は地水火風を統一する空的世界(スペース)を表し、地水火風空で物理世界(物質+エネルギー+空間)を表す。識が唯一、心理世界を表す。宇宙は、この物理世界と心理世界から成っている。地水火風空の物理世界は胎蔵界曼荼羅で表現され、識の心理世界は金剛界曼荼羅で表現される。

さて、この六大の特質が、言語を形作る六つの品詞と対応するという説を、私は打ち立てています。これは、言葉と文化の両方の世界を36年間研究してきてたどり着いた、言語と文化に関するプチ悟りです。早速、簡単に説明します。まず、対応関係を示します。この対応は、特に英語において顕著です。
地 名詞
水 形容詞
火 副詞
風 冠詞
空 前置詞
識 動詞+助動詞(=動詞句)

「名詞」は「地」のごとく存在感があります。それは、しっかりと決まった形や型を持ち、安定しているからです。何より、ほかの品詞に依存することなく、それ自体で存在しています。名詞だけ発しても、コミュニケーションが成立することも多いからです。だから、名詞はすべての土台になります。

「形容詞」は「水」のごとく柔軟性があります。名詞に合わせてかかっていく(修飾する)点が水のようです。水は地にしみこみ、地を充実させますが、形容詞も同じく、名詞を飾ります(充実させます)。例えば、名詞のflowerに形容詞のbeautifulを与えると、充実したbeautiful flowerが出来ます。

「副詞」は「火」のごとくインパクトを与えます。veryのような副詞は形容詞を引き立たせます。火は化学変化を表しているとも言えますが、これは、副詞にも当てはまります。
Wisely, John answered the question foolishly.
(賢いことに、ジョンはその質問に愚かな感じで答えた)

この英文は、「答え方は意図的におろかなものにしているが、Johnがそのように答えたことが、例えばひんしゅくを買わなかったり、偉そうに見えなかったりして、結果としては賢い行動であった」という意味となりえます。

副詞が化学変化を起こすからこそ、wiselyが様態副詞ではなく、主語評価を意図する文副詞として機能するのです。一方、形容詞は化学変化を行わないので、wiseとfoolishを同時に使うことはできません。

「冠詞」は「風」です。風は強く吹かない限り、それこそ空気のような存在です。冠詞も空気のようです。あってもなくても概略は通じます。しかし、あったほうが、名詞句に風格を持たせ、名詞句を完成させることが可能です。

風(気体)も、地(固体)や水(液体)に比べたら存在感がうすいけれども、嵐になると急に存在感が増します。英語の冠詞にも、そんなイメージがあります。冠詞は「単数・複数」(数がいくつあるか)と「定・不定」(決まったものなのか、特に決まってないものか)を同時に表す品詞と言えます。次の2種類の流れを感じてください。
(a) a student, two students, three students, four students …
(b) a student, the student, the student, the student …

(a)は単数の場合に何もつかず、数の大きさに関係なく、複数になれば一様にsがつくことを示しています。これは、英語の世界では、単数と(1を超える)複数を峻別することを示します。(b)では、初めて出てくる場合にはaがつき、2回目以降であれば何回目であってもtheがつくので、英語は初めてと2度目以降を峻別することがわかります。

まとめると、英語は、(a) oneで、(b) firstな存在が非常に重視されるということです。そして、それを1つの不定冠詞(=a, an)で表すことができるため、実は不定冠詞はすごく大きな主張をしているということがわかります。

和風とか洋風とかいう表現がありますが、この表現において「風」という言葉が、強い主張にかかわっていることと、冠詞が名詞句の主張にかかわっていることが似ていると、私は思います。

「前置詞」は「空」と似ています。空は「全くの無ではなく、素晴らしい有(「真空妙有」=真なる空は妙なる有である)である」と考えることができます。実は、五大の「空」と、「色即是空」の「空」は、厳密には異なる概念ですが、「真空妙有」は両方の概念にまたがるものであると、私は考えています。(いずれにせよ、「空」については、別の機会にブログで詳しく述べるつもりです!)

一見見えない(=空)ですが、実は素晴らしい存在(=有)であることが、前置詞のふるまいを見ていてわかるのです。次の英文を考察しましょう。
John gave Mary a book.(ジョンはメアリーに本をあげた)

上記の英文には前置詞が現れていません。しかし、これを名詞化すると一気に前置詞が現れます。英語の構造の深層に前置詞があり、それが名詞化によって復活したとみたほうがよいでしょう。
the gift of a book to Mary by John(本をメアリーにジョンによって与えられること)

もっと名詞的に表現すると「ある本のメアリーへのジョンによる贈与」となります。of a bookは対格、to Maryは与格、by Johnは主格を表していますが、元来、<P+NP>が基本単位で、文に直接かかわるときに、主語では常にbyが消え、SVOO構文においては、対格と与格のofとtoが消えます。「消える」という現象が「空」と符合します。ちなみに、この<P+NP>の構造は、これまでの話の流れから、五大(=地水火風空)全体に相当するのがわかるでしょう。

さて、「動詞」と「助動詞」が「識」に当たります。動詞が「識」にかかわるのは、動詞だけ発音すると、意志が最も強い「命令」の意味になることからも伺えます。
Go! (あっちへ行け)
Let me go!(離してよ)

動詞は意識的活動にかかわることが多いものです。一般に意識的行動を表さないsurpriseでもSVO構文で表現すると、意志の意味も出てきて、あいまいとなります。
John surprised Mary.

上記の意味が2つに解釈できるのです。下記の(b)のような意味があること自体、動詞は意志にかかわることを示しています。
(a) ジョンを見て(…のことを聞いて, etc.)メアリーが驚いた。
(b) ジョンは(例えば、背後から「わっ」と言うなど)意識的にメアリーを驚かせた。

英語の助動詞は、特に意識にかかわる品詞として際立っています。これは例を挙げるまでもないでしょう。
Will you open the window?(窓を開けてもらえますか)[相手への働きかけを示す]
This must be true.(これは本当に違いない)[ある事象へ確信度を示す]

まとめると、主語は特別なので、文の最初に来ますが、その後は、地水火風空識の順に右から左へと英文が構築されるのがわかります。
You must look at the very beautiful flower.
(地)  識      空   風   火         水     地

この記事の著者

通訳ガイド研究会
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