公開日:2019年1月12日


近親者に不幸があった場合、1年間は喪中といいます。日本では、この間は、新年を迎えても「おめでとう」と言えない状況なので、年賀状を出さないのが慣例です。一方、西洋世界は全く違うと言ってよいでしょう。もし不幸なことが前の年にあったなら,今年こそは良い年にと積極的に「I wish you a happy new year.」とメッセージ送ることに西洋人はためらいがないからです。西洋人にはとっては、悲しい過去と早く決別し、新たな素晴らしい年を素直に望むのです。

この発想の違いは、言葉からも分析できます。「明けましておめでとう」は新しい年を迎えておめでたいということであるから、悲しい喪中の状態で新しい年を迎えられない。つまり自分自身おめでたくないし、他人に「おめでとう」という嬉しい気分を表明することが、近い人が亡くなっている状況では難しい。日本人は過去に気持ちが向かうから、もっと具体的に言えば、亡くなった故人に対して気を遣うあまり、意識するしないに関わらず、「おめでとう」は失礼なのです。一方、I wish you a happy new yearは、正確には「おめでとう」ではありません。幸せな新年を希望していることの表明だからです。

卒業式も、過去を志向し、乗り越えて卒業できたことを祝うので、「卒業」の式なのです。一方、未来志向の西洋人は、これから次の高等教育へ向かう、または、大学などの場合、社会に飛び出す始まりの儀式として卒業式を捉えます。だから、卒業式のことをcommencement(始まり)と、特にアメリカ英語では表現します。更に、commencementは大学における学位授与式の意味も持っています。学位授与して新たな世界に飛び込むことを暗示しています。

更に、日本語の「端」は「始め」と関係があります。というのは、「始め」は「端占め(はしめ)」から来ているという説があるからです。一方、英語の「端」(end)には、「終わり」の意味があります。同じ「端」の発想でも、日本語は過去を暗示する「始め」と関係し、英語の端は未来を向かう「終わり」と強く関わっていることが分かります。

日本語と英語の文法差にも、日本文化の過去志向、西洋文化の未来志向は現われています。例えば、日本語の「テイル」と英語のINGを比べてみましょう。同じ現在進行時制を表すのですが、往来発着動詞を用いた場合は、意味が全く異なります。というのは、日本語の「テイル」は過去を表し。一方、英語ではこれからの未来(近未来)を表すからです。

  彼は来ているよ。(「到着した」を表す)
  He is coming.(「もうすぐ到着する」を表す)

日本人は西洋人に比べ、義理人情に厚いのも過去にお世話になったことを忘れない、すなわち、過去を常に意識することと密接な関係があります。日本人の精神性が過去志向だから、日本人にとっては義理人情が重要なコンセプトであると分析できます。「気を遣う」ということ自体、過去志向の精神性の結果として生まれているものでしょう。

とにかく、言葉や精神性も含め、日本文化は過去志向、西洋文化は未来志向ということができそうです。

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通訳ガイド研究会
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